医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

受験対策

あと1年!「小論文対策」を早めにすべきワケ

2021.01.06

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

医学部受験で小論文試験が行われる理由をご存知でしょうか? 小論文試験は、受験生の医師としての資質を見極めるために実施されているのです。学力試験で合格点を取るだけではダメなの? そうなんです。医師として相応しい人格者でないと、医学部には入れないのです。

「思いのまま書けばよい」という考えは禁物です。小論文試験は、学力試験や面接試験同様、あるいはそれ以上の配点がされている場合もあります。医師は人の生命を預かる責任重大な職務ですから、当然に強い責任感と倫理性が求められます。学力のみならず、受験生の人間性を量るために小論文試験があるということを心得てください。

 

医学部小論文の基本スタイル

小論文テーマの出題傾向は各医学部さまざまで、併願する場合は多角的な対策が必要です。しかし、医学部小論文試験の出題形式はおおよそ共通しています。以下にその典型的なスタイルを紹介します。

・文字数:600~800字

・試験時間:60~90分

・文体:論述形式(課題文型、またはテーマ型<絵・写真を含む>)

「課題文型」は、書籍や新聞記事からの抜粋された課題文を読み、それについて論じる形式のことをいいます。「テーマ型」は、あらかじめ大学側が設定したテーマについて論じる形式です。次に、文章全体のまとめ方について説明します。物語に「起承転結」があるように、小論文にも序論→本論→結論と段階を踏むセオリーがあります。

・序論:与えられた課題やテーマに対するファーストインプレッション、そしてそこから発想できる「疑問」や「問い」を書きます。

・本論:課題やテーマについての全容や背景を語り、次に序論で掲げた「疑問」や「問い」に関する事象や問題点、今後の課題について書きます。

・結論:本論で掲げた課題についての解決策を具体的に書きます。

今すぐはじめるべき小論文対策

小論文対策は、学力試験のように短期間での追い込み勉強ができません。なぜなら、小論文のヒントは日々発行・発信されている新聞やTV報道などに隠されているからです。すなわち、これから入試日までの毎日が、小論文試験の準備期間となるのです。

・新聞記事やTV報道からヒントを得る

新聞には医療系の記事が毎日必ず掲載されています。たとえば、新型コロナウイルスのニュースを例に取ると、初期発生地域、感染経路、世界各国の感染者数の推移などの進捗情報が逐次掲載されていきます。毎日欠かさず新聞を読むことで、「新型コロナウイルス」というテーマについて、時系列で、広く、深く把握することができるのです。また、TV報道でもそれらのテーマについての政策の是非や課題について討論されています。報道番組も並行してチェックしながら、そのテーマに対する自分なりの考え方や意見をまとめる習慣をつけましょう。

・今年の医療系記事をスクラップしておく

4月から9月の医療系ニュースは、小論文にもっとも取り上げられやすいテーマとなります。ですので、今すぐにでも医療系記事のスクラップ(またはネット記事のデータストック)をはじめましょう。テーマごとにファイルを分けて、時系列で記事内容を並べるようにしておくと振り返りがしやすいので便利です。新聞・TV報道からの情報収集は、早い時期から継続的に続けることが必要です。

制限内でベストな小論文を書き上げる訓練を

スクラップ(データストック)した新聞記事をもとに、そこからいくつかのテーマをピックアップして小論文を何本か書いてみましょう。できれば1週間に1本、1カ月に4本程度書いてください。

小論文試験では文字数や時間に制限があります。それぞれの制限内で仕上げられるよう、できるだけ多本数の小論文を書き上げ、テーマに合致した文章が組み立てられるよう訓練を続けましょう。ここで気を付けたいのは、自分のストレートな思いを安易に表現しないことです。前述の通り、小論文は「受験生の医師としての資質を見極めるため」のものなので、人間性・倫理性が疑われるような表現は避けたほうが賢明です。別の場面であれば個性や本音も大切かもしれませんが、「将来の医学生に相応しい」と評価される内容までに留めてください。

訓練のために書き上げた小論文は、必ず医学部受験の専門家に添削してもらいましょう。テーマに対する勘違いや筋道違い、定義のブレがないかを第三者の目から見極めてもらい、適切なアドバイスを受けることで、説得力のある小論文を書く力が備えられます。

小論文の「落とし穴」に注意

小論文試験は、限られた時間内に限られた文字数内でおさめることが必須となるため、普段ならありえないケアレスミスが多発します。小論文試験でよくある失敗を以下にまとめました。

・誤字や脱字が多すぎる

テーマに沿った理論には説得力があるものの、あまりに誤字・脱字が多すぎて試験官が興ざめしてしまうケースもあります。また用紙の使い方や、段落送りなどのルールが守られていないことも評価が下がる原因になります。できれば早目に書き上げて、もう一度読み直す余裕がほしいものです。

・文字数が足りない、多すぎる

試験開始後、すぐに全体文字数をチェックして、前述の序論・本論・結論ごとに文字配分を決めましょう。自分がおおよそどのくらいの時間で書き上げられるかも考えながら、時間内、できればそれより少し早めに書き上げられるように進めましょう。文字数不足・過多は減点対象になる場合がありますので、できる限りぴったり、それがムリならせめて8割程度まで埋めましょう。

・道徳性が疑われる不適切な表現

医学部の小論文試験は、受験生の人間性や倫理性を量るために実施されています。そのため、道徳・秩序に反するような不適切な表現は禁物です。

まとめ

小論文は、学力試験とは違い読解力・思考力・論述力が問われる試験です。試験で課されたテーマを正しく理解し、適切な疑問や問いを投げかけ、その解決策や提案を理論的に語ることが必要です。作文のように、主観的な感想や意見を語るものではありませんので、その点は気を付けてください。さらに、医学部受験の小論文試験では、医学の背景知識も必要になります。これから1年間、新聞記事等のチェックを怠らず、自分なりの考え方や方向性を構築しながら過ごしていただきたいと思います。

 

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