医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

受験対策

医学部受験会場がホテルなら「当日2部屋予約」が推奨される理由

2020.01.23

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

近年の私立大医学部入試が、都心のラグジュアリーホテルで行われている事実をご存知でしょうか。少子化の影響で、大学受験にもエンターテインメント性が求められるようになった?…いえいえ、これには理由があり、大学側としても言わば「苦肉の策」なのです。

「ホテルで試験が受けられるなんて、さぞ快適なのでは…」と思われがちですが、そもそも試験会場として造られた空間ではないので、不便、面倒なことは多々あるようです。受験生にとって実は「不快」なホテル入試に臨むためには、どのような準備が必要か、考えていきます。

 

医学部入試がホテルで行われることになった経緯

国公立大医学部の一般入試の志願者数は減少傾向にありますが、それとは逆に、私立大医学部の志願者数は増加の一途にあります。一般的な私立大医学部の募集定員が100人前後なのに対し、志願者は2000人以上も殺到している状況が近年続いているのです。以前は自校の校舎で収まりきっていた受験生の数が1000人単位で大幅に増えてしまったため、キャパオーバーとなり、各大学は校外に入試会場を求めざるを得なくなりました。

白羽の矢が立ったのは、ビジネス関連のイベントが開かれている大規模展示場や、普段は結婚式の披露宴などが催されているホテルの宴会場。一度に大人数を収容できることはもちろん、大学内の複数の教室を利用するのとは異なり、広く見通しの良い空間で行うため、試験官などのスタッフ数を減らせるというメリットもあります。

とはいってもそこは一般のレンタルスペース。試験予定日の予約が、ほかの企業等に抑えられてしまっている場合も多く、展示場であれホテルであれ、会場の確保に各大学担当者は奔走しています。

2019年度は、杏林大が品川の「グランドプリンスホテル新高輪」で、東京女子医科大が新宿の「京王プラザホテル」で入試を行っています。東京女子医科大は2020年度入試の際も、昨年同様に京王プラザホテルを利用します。

ホテル入試は不快?快適に受験する方法は?

ゆとりある空間、豪華なインテリア…目に入ってくるものはすべてゴージャスなものばかりのラグジュアリーホテル。そんな贅沢な空間で試験を受ければ、実力の何倍もの能力が発揮できそうな気がしてくるかもしれませんが、実際はそうもいきません。受験生を不快にさせる原因のひとつ、それは「休憩時間」にあります。

ホテル内のトイレはワンフロアに1ヵ所から2ヵ所ほどしかなく、個室数も3~5室程度。短い休憩時間に怒涛の如く押し寄せる受験生たちを捌き切るキャパはまったくなし。とくに女子トイレは悲惨なまでに混雑し、長蛇の列が縮まりません。ほかのフロアのトイレにも受験生が殺到し、一般客も相まってホテル内は大混乱。やがてタイムオーバーとなり、トイレ難民となった受験生は諦めて試験会場に戻るしかありません。

トイレを我慢したまま次の試験に臨むとなると、その悪影響は想像に難くないですよね。間違いなく本来の力を発揮できない危機に陥ります。それは何とか回避したいものです。

では、休憩時間内で確実にトイレを済ませるには、どうしたらいいでしょうか。メディカとしては、あらかじめ試験会場となるホテルの客室を借りておくことを強くおすすめしています。そうすれば、トイレの大行列に並ばずにすむほか、客室内のソファやベッドでゆっくり休めて、さらには次の試験科目の最終チェックもできます。

ホテルの予約は、試験の前日から翌日までの2泊3日で取っておけば安心でしょう。受験生は18歳以上と、もう大人として扱われてもおかしくない年齢ですので、一人で宿泊しても問題はないかもしれませんが、「親が一緒にいてくれたほうが心強い」という受験生もいますし、親御さん自身も同伴したほうが安心でしょう。受験生本人が望むのであれば、親御さんも同じホテルに宿泊してあげることが推奨されます。ただし、受験生の部屋と親の部屋は別々にし、2室借りることは鉄則です。受験は一人で臨むものですから、前日はあまり干渉せず、戦いに集中するための時間にしてあげてください。

試験日前夜からホテル宿泊する受験生のなかには、塾講師をホテルに呼び、翌日の予想問題についての直前対策講義を受けている人もいるそうです。そういった意味で、ホテルは入試ギリギリまで追い込みができる理想的な空間ともいえます。

志望校を絞り込む前にホテル予約を

多くの受験生が「センター試験の結果を見てからホテル予約をすればよい」と考えているようですが、それでは間に合いません。受験シーズンのみならず、近年はインバウンド効果により海外からの観光客需要が増えたため、都内ホテルは予約が取りづらくなっています。一般的なホテルではおおむね半年前から宿泊予約を受付し始めますので、試験日がわかり次第すぐに予約をするのがベストです。

試験会場がホテルでなくとも、前日は会場近くのホテルに泊まる予定の受験生は多いことでしょう。そんな人たちも、11月から12月に行われる模擬試験の結果で志望校を絞り込む前に、受験する可能性がある大学の近隣ホテルを抑えておきましょう。そして志望校が絞れたらすぐに不要なホテル予約をキャンセルし、ホテル側にかかる負担を最小限に留めるよう心がけましょう。

ホテル予約で出遅れた人は焦らずキャンセルを待ちましょう。センター試験(2021年度以降は大学入学共通テスト)の結果次第で、志望校を上げたり下げたりする人は必ずいるので、試験直前でのホテル確保も期待できます。

人気大学に近いホテルでは、受験生向けの宿泊プランを用意しており、勉強机や電気スタンド、加湿器の貸し出しや、チェックアウト後の荷物預かりなどのサービスが受けられます。普通のホテルの部屋に備え付けられた照明は勉強部屋と違って少し暗く、客室備え付けの机も、参考書やノートをたくさん広げて勉強する十分なスペースがないため、勉強机や電気スタンドのサービスは受験生にとってありがたいものです。エアコンの効いた室内は乾燥しがちなので加湿器をぜひ借りたいものですが、貸し出し台数に限りがあったり、貸し出し自体行っていないホテルもあります。もし借りることができなかった場合は、浴槽にお湯をはって浴室ドアを開けたままにしておくと、湯気が広がり室内の保湿ができますので、試してみてください。

当然ながら、ホテルでの宿泊は自宅で過ごすのとは環境がまったく違うため、体調を崩しがちです。入試前日は快適な室温の調整と保湿など環境を整えて早めに就寝し、翌朝はベストコンディションで臨みましょう。

 

お電話でのお問い合わせは、TEL 03-5412-6585

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