医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

親子関係

合否を左右するのは「親」?情報過多時代に「医学部受験」で勝つには・・・

2019.10.01

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

1浪、2浪は当たり前、浪人生活4~5年目ということも、ザラに起こる医学部受験。現役で合格できる生徒は限られていますから、今年度も多くの生徒が「予備校生」として受験生活を再スタートしました。もちろん、本人のがんばりに勝るものはないですが、一方で「親」が受験の結果を左右しているのも、明確な事実なのです。

 

「選ばない」という「選択」の恐ろしさ

突然ですが「選択回避の法則」という言葉をご存知ですか? コロンビア大学ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー氏が提唱した有名な法則ですから、お聞きになったことがある方も多いでしょう。「受験とどのような関係が?」と思われるかもしれませんが、まずは簡単にご説明します。

アイエンガー氏は「選択肢の増減」が、消費にどのような影響を与えるのかを調査するため、スーパーマーケットの店員に扮し、2回にわけてジャムの試食サービスを提供しました。1回目は6種類のジャムを用意し、2回目は、24種類に増やして試食を行いました。その際、ジャムを手にとった人に1ドル引きのクーポンを渡し、商品がどれほど購入されたのかを調べたのです。

では、結果はどうだったのでしょうか。結論から述べると、ジャムが多く売れたのは「前者」、つまり選択肢が少ないほうでした。

6種類の試食に立ち寄った客のうち、ジャムを購入したのは3割ほどでした。一方で、24種類の試食の場合はその10分の1、わずか3%の人しか購入しなかったことが判明したのです。

この調査によって、多すぎる選択肢を提供された人々は、「選ばない」という、一番消極的な決断をしていることが判明しました。彼らは、「自分が欲しているもの/必要なものがわからない」という状態であったといえます。

十数年前の研究ですから、もちろん異なる説もでてきています。しかし、上記の結果は、受験対策、特に医学部受験の世界にも大きく関係しています。

学習アプリや動画が蔓延するなか、適切な情報収集の方法とは?

情報化が進み、「正しい選択」をするのが難しい時代になりました。

本屋に受験対策本が並ぶだけの時代は終わり、勉強の形態は多様化しました。YouTubeで「受験対策」と一言検索すれば、科目ごとに、大量の授業動画が出てきます。スマホアプリも日々リリースされ、おびただしい量の情報がネットに蔓延しています。

私たち親世代のころを考えると、信じられないような世の中になりました。自分の学生時代を思い出し、「これだけ簡単に勉強できたなら……」と羨ましく思う方もいるかもしれません。もしくは、「これだけ手軽に勉強できるのだから、親自らが面倒をみる必要はないだろう」と考えている人もいることでしょう。

しかし、先に述べた調査からもわかるように、多すぎる選択肢が受験生を余計に悩ませる要因になっているのも、明確な事実です。

「どれにしよう……」が積み重なった結果、我が子が「何も選ばない」という選択をしているとしたら、恐ろしくありませんか?

親御さんには理解しがたい現象かもしれません。しかし、せっかくの「医師になる道」を自ら閉ざしてしまう生徒は、確実に増えています。加えて、子どもたちを取り巻く問題に気づいていない親御さんも多いように感じています。

やみくもに勉強しても意味はない

もし、「ウチの子はできが悪いから、アプリでもなんでも、とにかく勉強させないと」と考えているのなら、その思考は今すぐ捨てるべきでしょう。なぜなら、受験の合否を左右するのは、勉強量ではないからです。

受験業界の現況は、毎年めまぐるしく変化しています。一般的に、医学部の試験は、英国数理などの科目に加え、小論文と面接で構成されています。膨大な量の知識はさることながら、小論文などは、経験やテクニックが求められる作業です。

そもそも知識が足らなかった、論理の組みたて方に問題がある、基礎はあるが応用するスキルがない……。惜しくも受験に失敗し、浪人という道を選んだ生徒には、間違いなく科目ごとの「穴」があります。

受験成功への効率的な道は、一つずつ丁寧に「穴」を埋めていくこと、これに尽きます。そして、生徒ごとの弱みを減らすことが予備校の最たる役割といえます。しかし、まずはその「穴」を見る機会が無ければ、何も始められません。

特に医学部受験の場合、一般的な大学受験とは勉強する期間のケタが違います。個別か/クラス授業か/復習を重視するのか/応用力を鍛えるのかなど、生徒に合った受験生活を提供できるかが学力向上を如実に左右させます。裏を返せば、適切な環境を整えない限り、何年経っても「穴」が埋まらない可能性だってあるのです。

となると、親にできることは一つだけ。子どもたちが余計なストレスに苛まれることなく、「自分は今これを学ぶべき」と自信を持って勉強に取り組める場所を用意してあげることです。

我が子の「将来を見据えること」は親の役目

最後に、医学部予備校の役割が医学部合格に導くだけではないこともお伝えしておきます。

受験生の未来について考えてみましょう。無事医学部生になったあとの話です。
卒業後、多くの生徒は研修医になり、先輩医師から押し付けられる雑務をこなしながら、自分の医学的知識も日々研鑽しなければならない。一方で、社会的責任の重さはどんどん増していく……。周知の事実ではありますが、研修医時代の生活は決して楽ではありません。そんな時、支えとなってくれるのは医学部予備校で苦楽をともにした仲間たちです。

また、つらい研修医時代を終え、勤務医になり、行く末には開業を望んだとしましょう。もしくは大学教授への道を目指すかもしれません。いずれの選択にせよ、我が子のキャリアアップで重要になるのは「横の縁」、つまり医師となった仲間同士のつながりです。

受験期から「医師を目指す」という大きな志をもった仲間やライバルたちに囲まれることで、合格の先にある大きな目標を心の中に描くことができ、苦しい受験勉強をともにした体験は、一生の固い絆を結ぶきっかけになります。

医学部予備校の最大の使命は、もちろん医学部へ合格させることですが、「少人数制医学部予備校」で得られる最大の資産は、この横の縁のつながりが増える点にあります。

多くの親御さんは意識していらっしゃらないかと思いますが、医学部予備校選びの一つの指針として、「横の縁」ができる環境を提供し、将来有用な人間関係を受験期から作りあげられる医学部予備校なのかという点も、重要な項目になると言えます。

受験をするのは生徒、受験をサポートするのが予備校とするならば、「医学部受験合格」という目下のゴールだけに囚われることなく、将来を見据えた人生設計を練ることが、人生の先輩である親の役割ではないでしょうか。
適切な環境を整え、我が子の行く末を見守る役割への「気づき」が、何よりも大切です。

 

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