医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

親子関係

もう諦めたい…「医学部受験の辛さ」を子どもが訴えてきたら、どうする?

2020.02.08

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

もしわが子が「受験を諦めたい」と言い出したら、親としてどのように受け止めてあげたら良いでしょうか? 勉強に疲れてしまった様子のわが子に対して、「なに泣きごとを言っているの?」「今まで頑張ってきた苦労が水の泡じゃない」と発破をかけますか? ちょっと待ってください。それは逆効果かもしれません。

高校時代の3年間、いえ、それよりも長い期間、頑張り続けていた人もいるでしょう。体力的、精神的にも参ってしまったとはいえ、ここで諦めれば受験に捧げた長い歳月がムダになってしまいます。「できれば合格まで頑張ってほしい」と願うのが親心というものです。なんとかやる気を取り戻してくれる術はないものでしょうか。

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受験生のやる気を回復させるには?

・医師を目指すと決めた時の「ワクワク感」を思い出させる

「初心に帰る」ことは、やる気を回復させるのに効果的な手法です。面接試験の準備は、初心を思い出させるのに役立つでしょう。

医師を志す理由は人それぞれですが、医学部の面接試験で受験生が説明するのは次のような内容です。

「家族や親戚に医師や医療従事者がいて、その働く姿を見て、自分も目指したいと思った」「家族や友人が重篤な病気、または不治の病と呼ばれるもので長患いしているため、自分が医師となって助けてあげたいと思った」「『国境なき医師団』などの医療系NGOに所属する医師たちが世界各国で活躍する姿を見て憧れを持った」「テレビで放映された医療ドキュメントや医療ドラマを見て、高い医療技術を持つ医師やへき地医療などに興味を持った」

過去の自分を思い出すことで、医師を志すことを決めた時のワクワク感がよみがえり、「過去の自分を悲しませないように頑張ろう!」と、気概が復活してきます。面接試験の準備は、受験勉強の一環でもあるので、「意味のあることをしている」「先に進んでいる」という前向きな気持ちにもなれ、一石二鳥でしょう。

・いったんリセットして、趣味や遊びを解禁するのも手

それでもそれ以上に面接試験の準備をすることすらできないくらい、気が滅入っているならば、親のほうから、「わかった。もう勉強はやめなさい。受験しなくていいよ」と言ってあげてください。これは一時的なもので、「受験を諦める」のではなく、「受験からいったん気持ちを遠ざける」ようにしてあげましょう。そうすることで、受験生は呪縛から解かれ、のびやか、晴れやかな解放感に包まれます。勉強をやめたことで時間に余裕ができますから、スポーツやゲームなど、今までできなかったことをやってみるのも気晴らしになるでしょう。どんどんやらせてあげてください。

そして、毎日好きなことをして過ごしていると、不思議なことに受験生本人が「物足りなさ」を感じてきます。そして我に返るのです。「あんなに頑張っていた勉強をなぜやめたのだろう?」と。

人は、ある程度のストレスを感じていたほうが精神的に安定するといいます。ストレスが過剰になると何もかも投げ出したくなりますが、まったく無くなると逆に不安になるのです。この原理から考えると、これまでと違った生活環境(=趣味や遊びの世界)に自分の身を置くと、勉強漬け(=ストレス過剰)だった頭の中がリセットされて真っ白になります。しかししばらくすると、その生活が退屈に思えてくるものなのです。

これまで沢山の受験生を合格に導くことができた経験から言えることですが、たとえ少しの期間を受験勉強以外に費やしたとしても、合格圏内まで学力を伸ばすことは可能です。

「挫折」することは成長の一歩

受験生にとって第一志望の医学部に入ることが人生最大の目標であった場合、受験に失敗して進学できなかったという経験は「挫折」という心の痛みとなります。そしてその痛みを癒さなければ、トラウマとなって受験生の心の中に居座り続けてしまう可能性もあります。だからこそ、親御さんや家族は、しっかりと受験生の心に寄り添い、サポートしていただきたいのです。

精一杯努力したのであれば、挫折は無意味ではありません。チャレンジすることが大切なのですから、恥ずかしいことは何もありません。挫折こそ、努力の証でもあるのです。受験生の努力を労い、褒めてあげてください。

また、挫折することによって新たに見えてくるものもあります。たとえば、「入試問題の解答を見て、自分の苦手な分野がはっきりわかった」とか、「社交的だと思っていたのに、面接で緊張してしまう人見知りな自分に気づいた」など、弱点発見のきっかけになるのです。挫折は成長するために必要な人生経験であり、それを克服する知恵と勇気さえあれば、さらに大きな人間になれます。「ここで終わり」と萎縮せず、未来へ向かうための一歩と考えれば、挫折することも励みとなります。

将来、自分を必要とする医療機関があると信じて

「努力を怠らなければ夢は叶う」といわれます。しかしそれだけでは足りません。「努力を継続し、諦めないこと」も重要なのです。

医学部の受験生にはさまざまな人がいます。現役高校生はもちろん、10代から20代の浪人生、社会人経験を経た30代以上の人もいます。また、近年では海外からの受験生も増えていると聞きます。年齢や国籍に関わりなく挑戦する多くの受験生も、挫折という心の傷を何度も受けながら頑張っているかもしれません。その熱い戦線から離脱することはいつでもできますが、一度離脱したら、今と同じ位置に戻るためには、今の数百倍、いや数千倍の努力や精神力が必要になることでしょう。

本来なら友達と遊んだり、部活に打ち込んだりと楽しいことばかりの青春時代に、勉強一辺倒の日々を送らなければならないのは辛いことです。この貴重な時間を犠牲にしてまで挑戦する医学部受験は、価値のある大業だと思います。挑戦すること自体を褒め続けてあげてください。

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