医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

受験動向

男女差別、現役生優遇…世間が震撼した「不正入試問題」、過去発覚した大学4校

2019.12.28

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

入試時の採点審査に不正があったとして、東京医科大をはじめとする10校の医学部が実名公表された「不正入試問題」。文部科学省から指摘を受けた10校は、多くの受験生からの信用を失くし、また社会的なイメージも没落するという窮地に追い込まれました。各校は不正疑惑を晴らすべく調査を行い、その結果を公表しました。

たまたま現役と1浪が合格しただけ――聖マリアンナ医科大

2017年度と2018年度の2年間、2浪以上の女子の入学者がゼロだった聖マリアンナ医科大。2018年12月に文部科学省から不正入試疑惑の指摘を受け、内部調査の結果を2019年2月中旬に公表しましたが、その内容はこの指摘を否定するものでした。

「性別や浪人回数などで一律に加点するなどの事実は認められなかった」。

同大学いわく、「試験の成績順で合否を決めており、指摘のあった2年間においては、たまたま現役と1浪の人が合格しただけで、差別の意図はない」としています。加えて、在学生の男女比も「6対4」と女子の比率が高いこと、卒業生がそのまま同大学に就職する割合が高いため、女性教員数が多いことなどを挙げ、女子の受入れに積極的である姿勢を強調しました。そして、2年間の一次試験の不合格者に対しては、「申請があれば入試時の成績を開示する」と胸を張ります。

しかし、不正疑惑に関する内部調査を行ったのは、学校法人の監事を務める弁護士と公認会計士らで、いわば「身内」。何かしらの情報操作があったことも想像されます。

一次試験(英語、数学、理科2科目の合計400点満点)の結果を見ると、たしかに男女別の合格率に大差はなく、成績で公正に評価されていることが伺えます。しかし、二次試験(小論文100点と面接100点の合計200点満点)の結果を見ると、男子の合格率が女子の2倍以上になっているのです。

「面接官によっては男子や現役に高い点をつける人はいるかもしれないが、全体的には公正に評価している」と、あくまで個人的な評価の差であることを主張。とはいえ、指摘を受けたことについては重く受け止め、「今後は評価基準などを可能な限り公表する」としています。

女子はコミュニケーション能力が高いから――順天堂大

順天堂大は、二次試験の面接試験の際に男女で異なる合格ラインを設定していたことを指摘され、大学外部の第三者委員会に調査が委ねられました。同大学は根拠資料として、米・テキサス大学のローレンス・コーン教授が1991年に執筆した学術論文を提出し、合否判定の正当性を以下のように主張しました。

「女子はコミュニケーション能力が高いため、(評価を)補正する必要があった」。

しかし、当の論文執筆者であるコーン教授はこの件にかかわる取材に対し、「論文は心理的成熟の性差について調べたもので、コミュニケーションや言語能力の性差を調べたものではない」と回答したのです。これを受け同大学は、論文の解釈が誤っていたことを認め、二次試験の女子受験生に対する基準を、これまでの独自の経験的なデータに基づいて補正したとも語りました。

男子学生を増やす案を考えろ――東京医科大

一連の不正入試問題のきっかけとなった「文科省汚職事件」。当時の文科省局長が息子を東京医科大へ裏口入学させる見返りとして、文科省が行っている私立大学支援事業の対象校に同大学を選定したとするものです。この後、全国の医学部で一斉に調査が始まり、合計10校の入試不正が暴かれることになりました。

同大学の不正は2006年ごろから始まりました。2013年から2016年にかけては女子や多浪生を不利にする得点調整、2017年、2018年は合格ラインを上回った受験生を意図的に不合格する、といった不正行為が行われていました。職員たちは理事長から、「男子学生を増やす案をいくつか考えろ」と常々言われていたようで、女子の排除はトップダウンの組織的行為であったと考えられます。当時の理事長および学長は前述の汚職事件に絡んですでに退任しており、差別払拭の狙いもあってか、その後任には同大学初となる女性の学長が就任しています。

女子差別をしていた理由として同大学は、「女性医師の離職率の高さ」も挙げています。女性にとって働きやすい環境づくり、保育所やシッターなど育児サービスの充実など、職場の改善も求めていくべき課題です。

大学の裁量の範囲内と考えていた――北里大学

北里大学は、2018年度の補欠合格の電話連絡の際に、男子や現役生を優先していたことが不適切であると指摘されました。当初、同大学は文科省に対し、「そのような扱いはない」と自信を持って回答していましたが、さらなる訪問調査の結果、やはり不適切であったという結論に至ったものです。

同大学は、「私立大学の裁量の範囲内と考えていた」などとし、不正行為に至った理由として、「男子合格者の辞退率が高いことや、現役生のほうが厳しい授業に耐えられると判断した結果」と説明しています。

同大学はホームページ上で、「この指摘内容を真摯に受け止め、各種規範に則り、繰り上げ合格手続の適正運用に努めることといたします」と謝罪するとともに、ほかの私立大医学部と比較して、同大学医学部の入学者に占める女性の割合が高く、2018年度入試における22歳以上の受験生の合格率も私立大学医学部中4位であることも強調しています。

ちなみに同大学の2019年度入試では、女子合格者割合が41%、現役生の合格者割合が26%という結果になっています。

志願者数「減少」…受験生が今取るべき態度とは?

2019年度の入試では、女子差別を指摘された東京医科大、順天堂大、北里大、聖マリアンナ医科大、いずれの学校も、女子の合格率が男子を上回りました。これらの結果を受け、文科省も「公正かつ妥当な方法で入試が実施されたことを確認した」としています。

しかし、2019年度入試の志願者数を振り返りますと、東京医科大の昨年比約7割減を筆頭に、北里大、聖マリアンナ医科大の志願者数も減少しています。

この事実に、受験生はどう向き合い、受験に臨むべきでしょうか。『医学部受験の最大テーマ、不正入試問題…「余波残る今こそ狙いどき」といえるのか?』にて、メディカとしての見解を詳しく述べています。ぜひご覧ください。

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