医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

受験動向

医学部受験、「学費免除」「奨学金制度」がある学校とその条件

2019.12.30

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

一般的に、私大医学部では3000万円前後の学費が発生します。「できるだけ学費がかからない医学部に入りたい。でも国立医学部はほぼ前期日程の一発勝負で、センター試験も…」と考えている人もいることでしょう。しかし、諦めないでください。「学費タダ」「学費免除」などの制度を設けている大学もあるのです。

今回は、お得に学べる奨学金制度が充実した医学部、6年間ずっとタダで卒業できる特殊医学部を紹介し、そのメリットやクリアすべき条件について解説します。

 

6年間「学費ゼロ」の医学部はここだ

日本私立医科大学協会の調査によりますと、医師の養成費用は、医学部の6年間で「約1億円」。医学部進学を目指す子の親であれば、将来のためにある程度の出費は覚悟しているものですが、さすがに「億超え」となると、容易に決断できるものではありません。国立大医学部の場合、6年間の学費は約350万円程度です。そこを目指せるに越したことはありませんが、当然難易度も高く、狭き門です。

とはいえ、悲観するのは尚早です。条件を満たせば学費がタダになる医学部は、ほかにもあります。

たとえば、埼玉県所沢市にある防衛医科大学校は、卒業後9年間、自衛隊に勤務することを条件に、学費が全額免除になります。加えて、在学中は全寮制なので生活費負担が少なく、給与や賞与も支給されます。ただ、同大学は軍医養成校なので、自衛官としての実務訓練(パラシュート降下や野営など)も必須。学力のみならず、体力勝負なところもあるので、身体能力に自信がある人にはおすすめです。

もう1校は、栃木県下野市にある自治医科大学です。同大学では卒業後9年間、学生の出身地にある、へき地医療施設等で勤務することを条件に、学費が全額免除されます。授業では、CTやMRIなどを使わずに身体初見を行う訓練を繰り返し、医療の最新機器が導入されていないへき地での診断や、緊急性の判断が行える医師を育成します。こちらも全寮制で、寮費は月額8500円程度。安価な食堂や勉強室なども完備されており、志高い学友とともに、国家試験へ前向きに取り組める環境が整えられています。

成績優秀なら「特待生制度」を利用する手も

各医学部の医師国家試験合格率は、受験生の志望校選びの指標となっており、この数値が医学部の人気を左右すると言っても過言ではありません。そのため各大学は、「特待生制度」を設けて優秀な学生を集めることにも力を入れています。学費等を免除することで多くの志願者が集まれば、成績優秀な学生の入学率も高まり、将来的には国家試験の合格率アップにもつながるからです。

以下は、各医学部が提示している特待生制度の一例です。

●国際医療福祉大学「医学部特待奨学生制度」

特典:1年次250万円を給付・入学金150万円を免除、2年次以降は230万円を給付。

選考条件:特に成績が優秀な合格者(一般入試45名、センター利用入試5名)。

●北里大学「特別待遇奨学生制度」

特典:(第1種)入学金、授業料、施設設備費および教育充実費の納入免除。/(第2種)入学金および授業料の一部の納入免除。

選考条件:一般入試合格者のなかから上記2区分による特待生を選考(若干名)。

●慶應義塾大学「人材育成特別事業奨学金」

特典:4年間、年間200万円(総額800万円)を給付。

選考条件:一般入試成績上位者10名程度。

●東京女子医科大学「特待生制度」

特典:授業料(280万円)を継続的に4学年まで給付。

選考条件:一般入試の成績上位5名。

各大学の地域枠や、自治体・医療法人による奨学金も要チェック

2016年度の医学部卒業生から施行された「新専門医制度」によって、医師免許取得後2年間は内科、小児科、精神科など、多数の専門科を巡回して研修を行ったあとに、専攻科を決めるルールになりました。専門ごとの質を担保するために始まったこの制度でしたが、症例数や指導医が多い都内の病院に学生が集まるようになり、地方の医師不足が深刻化する要因の1つとなってしまいました。

都会へと流れていく医師、枯渇する地方医療、この悪循環を打破するために誕生したのが「地域枠入試」です。

地域枠入試は、一般入試とは別枠で合否判定されます。入学が決まれば奨学金が貸与され、卒業後一定期間(おおむね9年から11年)、指定された地域の医療機関に勤務することで貸与金の返済が免除されます。2008年頃から地域枠の募集人数は年々増員されており、2019年度では札幌医科大学が一般入試を含む定員全体の約8割、東北医科薬科大が約5割を地域枠に充てているなど、全国の医学部総定員数の15~18%が地域枠であると推測されます。

加えて、医師不足に悩んだ地方自治体が、独自の奨学金制度を設置しているケースもあります。以下は、地域内の特定の大学に入学する人を対象に、奨学金制度を用意している地方の一覧です。

北海道(札幌医科大など)/秋田県(秋田大)/福島県(福島県立医科大)/埼玉県(埼玉医科大など)/千葉県(千葉大など)/山梨県(山梨大など)/愛知県(愛知医科大など)/奈良県(奈良県立医科大など)/和歌山県(近畿大)/鳥取県(鳥取大など)

以下は、大学指定なしで、奨学金制度を設けている地方自治体です。

岩手県/秋田県(市町村振興枠)/山形県/宮城県/福島県(へき地医療等医師確保修学資金貸与制度)/富山県/岐阜県/静岡県/京都府/鳥取県(一般貸付枠)/島根県/高知県/長崎県/熊本県/宮崎県

また、病院独自で奨学金制度を設けている医療施設もあります。そのひとつが、救急や離島医療に力を入れている医療法人グループ「徳洲会」の奨学金制度です。在学中は毎月15万円が貸与されます。医師資格取得後は、同グループの関連医療施設で貸与期間の3分の2にあたる日数を勤務すれば、貸与金の全額が免除されます。

地方での生活費も加味し、経済状況・学力レベルに合った大学選びを

以上、奨学金制度が充実している大学・地域を紹介しましたが、地方の大学の場合、学費のほかに、家賃や生活費が発生することもしっかりと把握しておきましょう。

学費が安い医学部、奨学金・特待生制度がある医学部、学費が無料の医学部など選択肢はさまざま。経済状況・学力レベルに合った大学を選んで、合格を勝ち取ってください。

 

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