医学部受験コラム MEDICAL COLUMN
受験動向
正規合格じゃなくても希望は残る?…「補欠合格」の実際
2020.02.28
合格発表の日、正規の合格者と同時に、「補欠合格者」を発表する医学部があります。その発表は受験生を「補欠合格といっても、立ち位置としては合格に近い? それとも不合格に近い?」と、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、惑わせるものになります。
多いところでは入学定員の2倍もの人数が確保される補欠合格者。中には、繰り上げ合格になった際の順位を明らかにする医学部もあり、受験生の胸に希望を抱かせます。過去には、入試要項で明記した定員数の倍の補欠合格者を確保し、さらにはその半数が繰り上げ合格となったケースもあります。
期待してもいいのか、それとも早めに諦めたほうがいいのか…今回は、「悩ましい朗報」である補欠合格について検証します。
「補欠合格者」が繰り上げ合格に至るまで
正規合格者とは文字通り、入試で合格点に達し、入学資格が得られた人のことです。正規合格者の数を定員ピッタリにする大学もあれば、定員より多めの人数を正規合格者として発表する大学もあります。
正規合格者が全員確実に入学してくれればよいのですが、ブランド力があり学費も安い国公立大学を志望する受験生は多く、早い段階で合格した私立大学の入学手続きを済ませながらも、そのあとに発表がある国公立大学など上位校での合格を受けて、入学を辞退する人が出てきます。
大学側はそれを見込んで定員割れ分を補充するために、次点の受験者上位数名を「補欠合格者」としてキープします。そして、正規合格者の辞退数が確定したのちに、定員割れした人数分の補欠合格者が正規合格者にランクアップされることを「繰り上げ合格」といいます。
繰り上げ合格となった受験生は「なにかしら入学のための条件があるのでは?」と不安に思うかもしれませんが、心配は無用です。補欠での合格だからといって、奨学金やカリキュラムに差があるわけではなく、実習や授業で不利になるようなことも一切ありません。さらにいえば、卒業後、医師として就業する際のハンデになることもありませんので安心してください。
各大学医学部によって異なる補欠合格の取り扱い方
この補欠合格の取り扱いパターンは各医学部によって異なります。
・パターンA
正規合格者の発表とともに、補欠合格者も成績上位順に発表されます。補欠合格者は正規合格者の欠員に応じて、上位者から正規合格へ繰り上げられます。
・パターンB
正規合格者の発表とともに、補欠合格者も受験番号順に発表されます。補欠合格者は正規合格者の欠員に応じて正規合格へ繰り上げられます。
・パターンC
正規合格者の発表時に補欠合格者の発表はありません。正規合格者の欠員が確定してから、対象者に繰り上げ合格となった旨の連絡が入り、同時に正規合格者と同じ扱いになります。
「正規合格ではなかったものの、補欠合格には番号があった!」という場合は、補欠合格にすらならなかった、というよりはよい結果といえるでしょう。パターンAのような発表方法なら自分が繰り上げになる順番もわかるので、これまでの努力も報われるというものです。
しかし補欠合格はあくまで「今後、正規合格に組み込まれる可能性がある」というだけのことです。この段階で正規合格者と同等に扱われるわけではありません。まだ入学資格が与えられたわけではありませんから、浮足立たないようにしましょう。
補欠合格の枠が大きい私大医学部
国公立大学医学部との併願者が比較的多いとされるのが、日本医科大、東京慈恵会医科大、順天堂大、慶應義塾大です。この4校は、正規合格者の一部が国公立大へ流れるため、早めに繰り上げ合格者への連絡を始めます。
国公立大に合格した受験生は、すでに手続きしていた私立大に入学辞退の連絡を入れ、国公立大の入学手続きをします。それとは逆に、国公立大に合格したものの、やはり入学手続きを済ませた私立大に入学するという正規合格者もいます。このように合格者同士が錯綜するため、国公立大・私立大の入試担当者はともに新入生争奪戦に突入、すなわち、繰り上げ合格者への連絡業務に追われることになります。
一般的に繰り上げ合格の連絡は電話で行われます。連絡が入る時期は、合格発表以降から3月下旬までですが、大学によっては3月末、中には入学式の前日に連絡が来たケースもあるようです。
パターンCのような補欠合格の発表の形式は国公立大学にみられます。合格発表が3月中旬と遅いため、繰り上げ合格の連絡もこれ以降の3月末まで行われます。
3月中旬以降は、繰り上げ合格の連絡を待つ受験生のXデーです。合格連絡はほとんどが電話で行われ、大学によっては「非通知」でかかってくることもあります。この時期は、知らない番号でも着信したら必ず出た方がよいでしょう。
私大医学部では、正規合格者の中から国公立大学へ進学するため入学を辞退するであろう人数を見込んで、多めに合格者を出すところもあります。
ある医学部では、入試要綱に明記した募集定員は100人だったものの、その人数より5割増しの150人の正規合格者を発表しました。そして同じタイミングで、定員の2倍にあたる200人の補欠合格者を発表。さらに驚くことに、この補欠合格者の中の半数にあたる100人が繰り上げ合格となったのです。これらの人数から推測すると、正規合格者からかなりの入学辞退者が出たことと併せて、繰り上げ合格の連絡を受けた人の中にも入学を断った人が多くいたことが伺えます。
このように私立大医学部の入試においては、繰り上げ合格者の人数が正規合格者の人数を上回ることは珍しくありません。国公立大学の入試・合格発表日が3月下旬であり、大学側も入学ギリギリまで受験生の動向が読めないため、すべて割増しで出しているようです。特に国公立大と併願している受験生が多い私立大医学部では、それなりの人数を割増し合格としていると考えられます。
「補欠合格者」の発表に期待してはいけない理由とは?
補欠合格は期待してもよいのでは、と思えるような内容になってしまいました。しかし…
・自分が何番目に繰り上げになるかわからない医学部がほとんど。
・先に結果が出る私立大医学部の入学手続きはしておかなければならない。
・(不合格を想定した)来年度への受験準備に本腰が入らない。
・電話連絡がいつかかってくるかわからず、半月以上ドキドキして過ごさなければならない。
・結果、不合格確定となったときのガッカリ感が、期待していた分キツい。
などなど、さまざまなストレスを抱えて過ごさなければなりません。期待して待つよりも、きっぱり諦めて次のステップを考えた方が精神衛生上よいのではないかと思います。
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