医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

体調管理

医学部受験「おなかが痛くてたまらない…」予防策と緊急時の対処法

2020.01.22

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

受験当日、万全のコンディションで臨まなければならないのに、試験最中におなかが痛くなってしまう受験生は多いと聞きます。極度の緊張とストレスも原因のひとつと考えられますが、日ごろの食生活を見直すことで、急なトラブルを回避できるかもしれません。または、これまで気づかなかった疾病の可能性を疑ってみることもいいでしょう。さまざまな角度から受験生の状態を見て、不安な気持ちを少しでも取り除いてあげたいものです。そこで本記事では、おなかが痛くなってしまう原因にはどんなものがあるのか、そして対処法について、確認していきます。

 

日ごろの食生活が乱れていないか

腹痛を起こす原因として考えられるのは、食生活の乱れです。予備校での間食、家では夜食…思い当たる節がある人も多いことでしょう。今の時期は、受験生のストレスがピークに達しています。「食べ物ぐらい自由に選びたい/食べさせてあげたい」と思う気持ちは十分に理解できますが、些細なことで受験当日のコンディションが最悪になってしまっては、本末転倒です。

日ごろから胃腸にやさしい食事を心がけることで、受験当日の腹痛リスクを回避できます。毎日の受験勉強で弱った体を回復させるために、カロリーの高い食材や調理法を選ぶのは悪いことではありませんが、基本的には栄養バランスのとれた献立をつくることが先決です。

まず代表的な栄養素としては、エネルギーの源となる炭水化物です。おかゆや雑炊、蒸しパン、やわらかめのうどん、煮びたしした麩などは消化がよく、胃に負担をかけません。

次に体内の粘膜質をつくるタンパク質です。豆腐は温かい湯豆腐にして、卵はおでんや茶碗蒸し、鶏肉はささみやひき肉で和え物や鍋をしてもいいでしょう。カレイやタラなどの白身魚は煮つけにしていただくと、優しい味わいに食欲がそそられます。

ビタミンが豊富で免疫質を高めてくれる野菜類の補給も忘れてはいけません。カボチャ、ほうれん草、にんじん、カブ、大根、じゃがいもなど彩り豊かな食材を摂取することが病気の予防につながります。

調理法は、できるだけ細かくカットして、生のままでなく、必ず火を通すこと。スープなどの流動食にすれば、消化の働きを助けてくれます。さつまいもや小松菜も身体によいですが、これらの食材には胃粘膜を傷つけてしまう食物繊維が豊富に含まれているため、食べ方に一工夫が必要です。さつまいもはペースト状につぶして繊維質を取り除きます。小松菜は葉っぱの部分だけを食べれば問題ありません。

おやつが食べたいときは、ゼリーやヨーグルトのような口に入れてすぐ溶けてしまうものを選びましょう。特に腸の活性化作用が望めるヨーグルトはおすすめです。

水分補給をするなら常温の水や麦茶を。少し甘味が欲しいというときは、常温のスポーツドリンクでもいいでしょう。

胃腸に刺激が少ない献立づくりを心がけ、食ベ過ぎないようにしましょう。冷やした食べ物や飲み物は避けたいところです。また天ぷら、フライ、コロッケ、からあげなどの油で揚げたもの、ラーメンやカレーライスなどのハイカロリーな献立、おやつのポテトチップなどは消化が悪いのでおすすめできません。

おなかの痛みは「過敏性腸症候群」のせいかも?

急におなかが痛くなる原因としては「過敏性腸症候群」が考えられるでしょう。下痢がちであったり、逆に便秘がちであったり、もしくは数日おきに下痢と便秘を繰り返したり、おならが出やすい…といった、非常に困った症例が特徴です。

腸が必要以上に動いてしまっているか、または腸内の状態が悪いため、この病気になるといわれていますが、根本的な原因としては、次のようなことが考えられます。

まず大前提として、「ストレス」が悪影響を及ぼしているのは間違いないでしょう。毎日の受験勉強で疲労が重なっていることに加え、試験会場で急激に緊張してしまうと、ストレスは最高潮に達し、自律神経が乱れてしまうのです。

特に、完璧主義な子どもは、「絶対に合格を勝ち取る!」という強い意志によって自分で自分を追い詰めてしまいます。また、引っ込み思案な子どもも注意が必要です。「自分に自信がない…ほかの受験生のほうが優秀に見えて仕方がない…」とふさぎ込み、必要以上に萎縮してしまうことは、精神衛生上よくありません。どちらのケースでも、身体に変調をきたしかねませんので、日頃からしっかりサポートすることが大切です。

また、「生活習慣の乱れ」にも注意しましょう。寝不足や暴飲暴食、運動不足をはじめとした身体的な負担は、結果として慢性的なストレスにつながります。勉強に集中したい気持ちはわかりますが、十分な睡眠、適度な運動も重要です。「健康な精神は健康な肉体に宿る」ということを、今一度心に留めてください。

なお、薬の服用も大切な選択肢のうちのひとつです。バスに乗って遠足へ出かける前に、酔止め薬を飲んでおいたから車酔いをしないで済んだ、という経験をした人も多いですよね。それと同様で、試験前に胃腸薬や整腸薬を飲んでおけば、試験中にトイレへ行きたくならないかもしれません。

ただし、受験当日に初めて飲むのは避けたいところです。飲み慣れない薬の服用が原因で、予期せぬ体調不良が起きてしまう心配があるからです。過去に何度か服用していて、副作用が起きなかった薬を選ぶことが賢明です。

心配な場合は、内科や消化器内科、心療内科を受診し、先生に相談しましょう。過敏性腸症候群は、薬で改善が見込める症状です。「時間がもったいない」などと考えることは禁物。受験は年に一度の一発勝負ですから、コンディションを整えることに最善を尽くして後悔はしません。

手術中の医師も愛用?「大人用オムツ」という選択肢を知る

これまでは、おなかが痛くならないための、事前対策について見ていきました。しかし、万全のコンディションで臨んだとしても、受験会場のトイレの数が少ないと、不安になってしまいますよね。実際におなかが痛くなったときの対処法としては、何が考えられるでしょうか。

たとえば、東京女子医大の一次試験会場は京王プラザホテルです。受験会場として使用することを想定し設計された建物ではありませんので、トイレの数は非常に限られています。トイレに並んでいるだけで休憩時間が終了し、泣く泣く諦めた、という受験生の声を毎年耳にします。

このようなケースにおける最善策は、受験当日に京王プラザホテルの一室を予約しておくことです。事実、毎年多くの親御さんがホテルを予約されています。

日々の食生活の改善や、胃腸薬などの服用、ホテル予約でも不安という人は、最終手段として「大人用オムツ」を穿いて試験に臨むという選択肢があることも、知っておきましょう。ある看護師さんから聞いた話ですが、医師のなかには手術中にオムツを着用している人もいるということです。医師の方々は、長いときは10時間以上も手術室に入り、トイレ休憩はおろか食事もせずに執刀しています。将来、医療の最前線に立つ自分を想像しながらオムツにチャレンジすることは、何ら恥ずかしいことではありません。

まとめ

先輩受験生に聞いたところ、「受験日前夜の夕食は、出汁の効いた優しい味の和食を腹七分目ぐらい食べて、早めに就寝。受験当日の朝食は温かいスープを食べて出発。試験会場に入る前、休み時間には必ずトイレに行くようにした」とのことです。おいしい食事と睡眠を十分にとり、万全の態勢で試験に臨みましょう。

胃腸薬や整腸薬は、家を出る前に一度飲んでおき、予備にもう一回分持って試験会場へ出かけることをおすすめします。薬を持っているというだけで「お守り代わり」にもなります。

なお、センター試験では、試験官同伴でトイレに行くことが可能です。ムズムズしながら試験に臨んでもいい結果は見込めませんから、我慢せず手を挙げるようにしましょう。

 

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