医学部受験コラム MEDICAL COLUMN
受験対策
医学部受験「2020年度面接・小論文対策」主要な時事ニュースを振り返る
2019.12.29
ラストスパートに入り、来る日も来る日も勉強漬けの皆さん。特にこの時期は、テレビなんてもってのほか、「勉強以外のことに目を向ける余裕なんてない!」と考えている受験生も多いはずです。
しかし、医学部受験の面接・小論文では、「時事ネタ」を問われることが少なくありません。
普通に暮らしている人にとっては常識中の常識、誰もが知っているニュースを、「えっ、全然分からない…」となってしまったら手痛いものです。受験当日、真っ青な顔になってしまわないように、今年の大きなニュースをおさらいしてみましょう。「聞いたこともなかった」「耳には入っていたけどこんなニュースだったんだ!」といった事件・出来事があれば、これを機に、下調べすることをおすすめします。
2019年「上半期」の主要なニュース
1月 ①【中国で世界初の「ゲノム編集べビー」が誕生】
1月21日、中国広東省・南方科技大の賀建奎副教授は、「ゲノム編集により遺伝子を改変した受精卵で双子を誕生させた」と発表、中国当局もこれを事実であると認めました。世界で初めての「ゲノム編集ベビー」誕生のニュースに、各国の医学界が騒然となりました。
今回の研究では、双子の赤ちゃんの遺伝子に、エイズウィルスに感染しにくくするゲノム編集が施されましたが、その成長過程で想定外の健康被害が起きる可能性や、人為的に改変された遺伝子がその子や孫に受け継がれるリスクも懸念されます。「人体への影響が未知な研究は、倫理的に問題がある」として多くの科学者が批判しています。加えて、賀副教授が自身の名声と利益のためにこの研究を行ったと表明している点も問題視されています。
1月 ②【千葉の小学4年女児が虐待死】
1月24日、千葉県野田市立小学校4年生の栗原心愛(みあ)さんが自宅浴室で死亡した事件。翌25日、千葉県警野田署は、傷害容疑で父親の勇一郎容疑者(現在被告)を逮捕しました。勇一郎被告は心愛さんを日常的に虐待、1月22日から24日の間、心愛さんに食事を与えなかったり、冷水を浴びせたりして死亡させたとしています。また、心愛さんの母親も傷害幇助(ほうじょ)罪で起訴されました。その裁判は6月に終了し、懲役2年6ヵ月、保護観察付き執行猶予5年の判決が確定しています。
この事件後も、各地で身内による児童虐待事件が多発し、社会問題化しています。仕事や生活について親が抱えている不安が要因とも考えられていますが、家庭の問題に行政や地域住民がどこまで介入できるかが、事件回避の糸口となりそうです。
2月【探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに着地成功】
2月22日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられた探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウへの着地に成功したと発表しました。石や砂などの採取にも成功した可能性が高いとの報道に、多くの国民が歓喜しました。
先代「はやぶさ」が航行途中に見舞われた多数のトラブルを教訓に、アンテナ・燃料配管の再検討、姿勢制御装置やエンジンの性能を向上し誕生した「はやぶさ2」。約1年5ヵ月の探査活動を終え、来年秋に地球へ帰還する予定です。
3月【マリナーズ・イチローが引退表明】
3月21日、日本プロ野球と米大リーグでプレーし、日米通算4367安打を記録したマリナーズのイチロー選手が現役引退を表明しました。
4月【池袋で高齢ドライバーが暴走、母子が死亡】
4月19日、東京・池袋で高齢ドライバーが運転する車が暴走し、通行人らを次々と撥ね、乗用車を運転していた男性を含む10人が負傷、3歳の女児とその母親(31歳)が亡くなりました。
このような高齢ドライバーによる重大事故が全国で多発していることから、運転に自信のない高齢者に対し、免許の返納を促す動きが高まっています。しかし、公共交通機関の整備が行き届いていない地方に住む高齢者にとって、車はライフラインの一部でもあるため、返納に前向きになれないのが現状のようです。
このニュースは、12月に行われた東京医科大の推薦入試・面接試験で取り上げられており、「高齢ドライバーが起こした事故についてどう思うか」「もし自分の祖父や祖母が高齢ドライバーだったら、どのように免許証返納を勧めるか」「高齢ドライバーが事故を起こす原因は何か」「面接官を祖父・祖母に見立てて、免許証返納の説得をしてください」などの質問がありました。
また、11月に行われた福岡大学医学部の面接試験では、「高額所得者の医療費引上げ」「遠隔医療」「がん患者に対するゲノム医療」などに対する考え方についての質問がありました。高齢者・医療費・ゲノム関連などの最新ニュースについては、改めてチェックする必要がありそうです。
5月【天皇陛下即位。新元号「令和」がスタート】
平成の天皇が4月30日に退位され、5月1日から皇太子徳仁親王殿下が第126代天皇に即位、元号が「令和」となりました。10月22日、即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われ、11月10日には「祝賀御列の儀」のパレードも開催。沿道で多くの国民が祝福しました。
6月【ハンセン病家族訴訟、国に賠償命令】
ハンセン病患者の隔離政策により、親族も差別や偏見を受けたとして、元患者の家族が国に対し損害賠償を求めた訴訟で、6月28日、熊本地裁は国に賠償を命じる判決を言い渡しました。さらに11月には、家族に最大で180万円を支給する補償法が成立しました。
明治時代、ハンセン病患者のための療養所第一号が静岡に誕生し、その後、公立の療養所が全国各地に設立されました。1930年代から40年代には、国によるハンセン病患者の強制隔離政策が進められ、その結果、患者のみならず、その家族や親戚も周囲から差別を受けました。特効薬が開発された現代でも、元患者の社会復帰は困難を極め、最終的には療養所へ戻り、そこで余生を過ごす方も多いようです。
メディカ生は毎年、国立ハンセン病資料館と、療養所である多磨全生園を訪ねていることもあり、より身近に感じたニュースでした。
2019年「下半期」の主要なニュース
7月【エボラ出血熱など5種類の病原体輸入を発表】
2020年東京オリンピック・パラリンピックでの訪日客増に伴う、感染症リスクが議論されています。国内で流行したことのない感染症の検査体制を強化するため、7月1日、藤野勝・武蔵村山市長は、根本匠・厚生労働相と会談し、国立感染症研究所村山庁舎(以下、感染研)でエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱の5種類の感染症のウイルスを輸入し、保管する計画を容認する考えを伝えました。9月にはこれらの病原体が日本に上陸し、感染研の「BSL4」施設で保管が始まっています。
感染研はこれら5種類の感染症について、これまで人工的に合成した病原体の一部を使った検査法を用いてきましたが、「本物の病原体の保管を始めたことで、迅速で正確な診断が可能になる」としています。
8月【茨城の高速道で「あおり運転」行為の男を逮捕】
8月18日、茨城県守谷市の常磐道で「あおり運転」をし、停止させた後続車の男性に暴行したとして、茨城県警は男を傷害容疑で逮捕、のちに強要容疑で再逮捕しました。
9月【ラグビーW杯で日本代表がベスト8に】
9月20日、日本がホスト国となり「ラグビーワールドカップ2019」が開幕しました。日本代表は、初戦となった対ロシア戦での勝利を皮切りに順位を進め、強豪スコットランドにも28対21で勝利、すさまじい盛り上がりを見せました。10月20日の準々決勝戦で南アフリカに敗退したものの、日本・アジアラグビー史上初のベスト8入りを果たしました。
この歴史的な快進撃の効果でラグビーファンが急増。チームスローガンの「ONE TEAM」は、2019年の新語・流行語大賞に選ばれ、稲垣啓太選手を表した「笑わない男」というキャッチコピーも多用されるなど、列島がラグビー一色となりました。
医学部受験の面接・小論文でもよく「チーム医療」という言葉が使われますが、改めて受験生の皆さんも、将来1つの目標に向かって一致団結し、チームワークよく努力を続けていくことの大切さを学ぶことができたのではないでしょうか。
10月【消費税率10%がスタート】
10月1日、消費税率が8%から10%に引き上げられました。同時に、外食と酒類を除く飲食料品などの税率は8%に据え置かれる「軽減税率制度」、クレジットカードや交通系ICカードなどの電子マネー、スマホを使ったQRコード決済を利用したキャッシュレス決済でポイントが付加される「ポイント還元」制度が導入されました。
11月【大学入試、英語民間試験の採用を延期】
11月1日、「身の丈に合わせて勝負を」といった発言で批判を浴びた萩生田光一文部科学大臣が、英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」導入の見送りを発表しました。令和2年度から開始される予定でしたが、新学習指導要領が適用される令和6年度からの実施が検討されています。
12月 ①【アフガン支援の医師・中村哲さんが殺害される】
12月4日、アフガニスタンで医療や生活環境への支援に尽力した医師の中村哲さん(73歳)が殺害されました。中村医師は非政府組織「ペシャワール会」の現地代表でした。九州大学医学部を卒業後は、日本国内の病院での勤務を経て、1984年にパキスタン北西辺境州の州都ペシャワールに赴任、ハンセン病に関わる医療活動を始めました。
政府の圧力によりパキスタン国内での活動が困難となったあとは、アフガニスタン地域に拠点を移転。2010年、「水があれば疾病を含め多くの問題が改善される」との思いから、総延長25km超の「マルワリード用水路」を開通させました。その功績は多くの国民・政府に認められ、2018年にはアフガニスタンの国家勲章を受章しています。
中村哲先生が日本に帰国された際、メディカでは、できる限り講演会に参加させていただいていたため、本当に悲しいニュースでした。中村哲先生のご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
12月 ②【吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞】
今年のノーベル化学賞に、リチウムイオン電池を開発した旭化成の名誉フェロー・吉野彰さんが選ばれました。12月10日(日本時間の11日未明)、スウェーデンの首都ストックホルムで行われた表彰式にて、記念メダルと賞状が授受されました。
吉野さんは71歳。1981年からリチウムイオン電池の研究を始めたものの、なかなか成果が出ず、スタッフ削減といった窮地にも陥りましたが、諦めず続けてきた努力が実を結びました。受賞のあと、吉野さんが語った「長かったような短かったような…」という言葉が印象的でした。
これは面接・小論文とは関係ありませんが、化学の問題で「リチウム電池」と関連した問題が出題されるかもしれませんね。
お電話でのお問い合わせは、TEL 03-5412-6585