医学部受験コラム MEDICAL COLUMN

受験対策

英単語の「丸暗記」はもう嫌…効率的な覚え方はないの?

2021.01.04

亀井 孝祥
医学部受験予備校メディカ代表

言語全般に言えることですが、単語は文章の中での使われ方次第で、複数の違った意味に訳されるパターンがたくさんあります。たとえば英語の“run”は、組み込まれる文章によって、「走る」「逃げる」「経営する」「立候補する」などと意味合いがガラッと変わります。単純にアルファベットの綴りを覚えるだけでなく、こういった文章表現次第で変化することも併せて覚えなくてはなりません。だからといって、英単語辞典に載っている使い方の例文まで丸暗記となると至難の業です。

医学部受験のために覚えるべき英単語数は6000語以上といわれます。これらを丸暗記ではなく、効率的に覚える方法はないものでしょうか?

 

丸暗記より「短時間で何度も復習」が効果的

ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスの研究(エビングハウスの忘却曲線)では、「人間の脳は復習しないと忘れる」という結果が出ています。この研究は、被験者に無意味な音節を記憶させ、時間経過でどれだけ忘れてしまうかを調査したもので、その結果、20分後に42%、1時間後に56%、9時間後に64%、1日後に67%、2日後に72%、6日後に75%、31日後に79%の記憶が消えてしまうことがわかりました。

さらにこのエビングハウス理論に次いで、カナダのウォータールー大学では「記憶を定着させるには、どのように復習したらよいか」という研究がなされています。この研究では、記憶した24時間以内に10分間の復習をすると記憶率は100%に戻り、次回の復習を1週間以内に5分程度の復習をすればまた記憶が戻り、さらに1か月以内に2~4分の復習をすればまた記憶が復活するということがわかったのです。

一度覚えただけでは記憶は消えてしまいますが、定期的に、たった数分の復習を繰り返せば、記憶が定着するということです。この理論を英単語の勉強に置き換えると、一度で丸暗記しようとするよりも、何度も繰り返して覚えた方が確実ということになります。

そこで、英単語を覚えるのに理想的な復習スケジュールを考えてみました。ここでは、1日に20語(6000語÷300日)の英単語を覚えると想定しています。

【理想の復習スケジュール】

・1日目:記憶(40分間、1語2分。1語ずつ書き写し、さらに例文などを作って読み上げながら覚える)
・2日目:復習(10分間、1語30秒。書き写しと、1日目で作った例文を2~3回読み上げる)
・7日目:復習(5分間、書き写しと、1日目で作った例文を1回ずつ読み上げる)
・30日後:復習(5分間、1日目で作った例文を1回ずつ読み上げる)

復習を何度か繰り返すにしたがって、学習時間を少なくしても記憶できるようになります。これはすなわち「記憶が定着した」ことのあらわれです。エビングハウスやウォータールー大学の研究を参考に、自分なりの復習スケジュールを立ててみるのも良いでしょう。

効率的に英単語を覚えるコツ

・イメージを膨らませて覚える

ひとつの単語の意味から、文章になった時のさまざまなシチュエーションを思い浮かべて、そのイメージから単語を思い出す方法です。

たとえば“run”なら、“run on the ground”(グラウンドを走る)、“A thief runs away.”(泥棒が逃走する)、“run a company”(会社を経営する)、“run for election”(選挙に立候補する)などの文章表現ができます。この文中にある「グラウンド」「泥棒」「会社」「選挙」の映像を頭の中でイメージすると、逆に“run”が思い出されるように、単語の意味と例文が自然に連動できるようになればベストです。

・声に出して耳から覚える

英単語学習は、単語集やカードなどを見て学ぶ「目で見る力」を使うことが多いですが、音から記憶する「耳で聞く力」も大変役立ちます。覚えたい英単語を、声を出して読み上げてみましょう。架空の相手をイメージして、英会話を交わすように文章を読んでみるのも良いかもしれません。せっかくなので、アクセントなどにも気を付けて正しい発音することを心がけましょう。また、電車など公共交通機関の移動時間中に、英単語の音声テキストを繰り返し聞くことも効果的です。

・例文を作って覚える

覚えたい英単語を使って自分なりに英文を作ってみましょう。例えば前述の“run on the ground”を用いた短文を2~3通り、意味合いやシチュエーションを変えて作ってみると、その文章から湧き上がるイメージとともに、英単語を脳に印象付けることができます。作文するのにちょっと苦労する単語もあるかもしれませんが、その苦労した印象が単語を思い出すきっかけになってくれるかもしれません。単語集をパラパラと見るだけでは覚えられません。その単語の意味について深く考え、どっぷり浸かることで記憶が定着していくのです。

医学部受験に強い英単語帳を選ぼう

「医学に関する英単語も覚えた方が良いのでは?」という疑問もありますが、基本的にはそれほど力を入れなくて良いと思います。過去の英語試験では、医学の専門用語が含まれる長文問題には、日本語で注釈がつけられていたこともありました。ただ、一部の私立大学では注釈なしで出題されたケースもありますので、志望医学部の過去問を振り返って、出題スタイルをチェックしておいた方が良いでしょう。

最後に、多くの先輩たちも使っていた「医学部受験に強い英単語帳」を紹介します。
・『システム英単語』(初級レベル)
近年の入試で頻出度の高い単語が網羅されています。赤フィルターで隠しながら暗記できるページ構成になっています。
・『英単語ターゲット1900』(初級レベル)
一般の大学受験でも使用されている単語帳で、数十年前から受験生に愛用されてきた歴史ある1冊です。レイアウトがわかりやすいと好評です。
・『DUO3.0』(中級レベル)
収録語数は約1600語、熟語も約1000ワード収録されています。また例文収録数も豊富で、これらの例文を読むだけで、自然と単語が覚えられます。
・『データベース5500完成英単語・熟語』(上級レベル)
上記の『システム英単語』や『ターゲット1900』などをクリアした人向けの単語帳です。難関国公立大医学部を目指す人におすすめです。

まとめ

英語を覚えるために大切なのは、「日本語脳(=まず日本語を頭に思い浮かべてから英語に変換する)」から「英語脳(=感情や状況を本能的に英語で表現する)」へと志向を切り替えることです。英語を感覚的に、自然なかたちで頭の中へ取り込むためには、海外の映画やドラマを観たり、生の英会話が飛び交う場所で過ごしたりすることも効果的です。教科書や単語帳を使った勉強も大切ですが、ときには違った角度で英語を眺めてみるのも良いでしょう。

 

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